格闘

プロレス・スターウォーズ

作画:みのもけんじ、原案:原康史
グループ・ゼロ

このマンガのレビュー

プロレスとは何か。それは競技とは別の次元のアートであり、演劇性も含むスペクタースポーツと言えるだろう。プロレスラーとはアスリートとしての能力と同時にキャラクター性が求められ、観客はそこに自己投影しながら、リング上で展開するドラマに一喜一憂する。その傾向はとくに海外で顕著で、WWEなどのプロレス団体では、レスラー達を「超人=神話の世界の住人」と扱うスタンスをとる。これはあるいは民族学における「まれびと=異界からの来訪者:神」とも考えられるだろう。本作は80年代に描かれた作品ながら、その風潮を先取りした意欲作で、実在レスラーを登場させながら、全くの荒唐無稽な展開を見せる。かの大巨人アンドレ・ザ・ジャイアントは、実身長の2倍に強調され、ロシア人レスラーの登場シーンには冷気が立ち込め、人類と類人猿の間をつなぐミッシングリンクまでリングに登場する(実在のレスラーだが)。覚醒したレスラーの一撃で、対戦相手は天井まで吹き飛び、レスラー同士の正面衝突ではリングは軽く崩壊する。これが神話の世界の出来事でなくて何なのか。マンガならではの虚構性とリアルなリング上のドラマが絶妙に絡み合った異色作として再評価されて欲しい作品である。 中村 公彦

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