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車いすバスケットボール

リアル

井上 雄彦
集英社
それぞれの現実の困難に向き合う。車いすバスケは格闘技だ

このマンガのレビュー

2020年11月に約6年ぶりの最新刊15巻が発売されると、井上雄彦先生のファンから喜びの声が上がり話題となった『リアル』。本作は登場人物たちが取り返しのつかない事故、どうしようもない病気、それぞれ重たい現実(リアル)を背負いながら車いすバスケに夢中になっていく様子を描いた人間ドラマです。そして競技としての車椅子バスケの面白さ、迫力が存分に描かれており選手たちが本当に恰好良いのです!是非この格好良さを作品を通して体感してください! よね

車椅子バスケットボールという障害者スポーツを題材にした作品。3名の主人公それぞれの視点から描かれた物語ではあるが、その全てに車椅子バスケが関わってくるが、単純にスポーツとしての魅力が全開に描かれている点に注目したい。それまで多くの読者にとって馴染みの無かった車椅子バスケという競技の迫力、出場できる選手の点数の概念の解説や、競技用の車椅子を扱う際の技術としての難しさも丁寧に描かれている。障害者スポーツという括りが最早必要無いのではないか、というくらいに激しさとスピード感全開で描かれた1競技としての魅力を作品から堪能してほしい。 もり氏

登場した当時「車いすバスケットボール」はもちろんのこと、パラスポーツ全般がまだよく知られていなかったけれど、それを一変させた作品。「車いすバスケ」の激しさ、強さ、面白さを伝えてくれるだけではなく、様々なキャラクターたちを通して理不尽な状況や人生に立ち向かう本当の強さも伝えてくれる。連載開始からもう20年以上経ってることに驚くが、今でも続きを読むのがとても楽しみで仕方ない。 鈴木 重毅

事故で少女を下半身不随にしてしまい、高校も退学になって大好きなバスケから離れざるを得なくなった野宮、病気で片足を失うものの障碍者バスケットに生きがいを見出す戸川、他人を見下して生きてきて事故で障碍者になった自分を受け入れられないバスケ部キャプテン高橋。大事ななにかを失った3人が、挫折を繰り返しながら必死で生きる姿を描くスポーツマンガ。個々の登場人物の葛藤や苦しみが胸に迫るが、特に、高橋のリハビリ仲間で下半身不随の悪役プロレスラー白鳥が臨む引退試合は、野心、情熱、劣等感、自尊心、エゴ、そして友情など、人間の様々な感情が凝縮されたエピソードになっていて号泣必死だ。 椎名 ゆかり

「コート上の格闘技」と呼ばれる車いすバスケットボールを軸に、3人の男たちの人生を描いた『リアル』。本作を読んで私は車いすバスケを知りました。自分の両腕だけを使って、コートを走り回り、シュートまでうつ。その激しさに衝撃を受けました。自分の腕だけを使って前に進み続けていく。『リアル』に出会って私は、車いすバスケの醍醐味を、そして人生の歩み方を教わりました。 江口 ひろ

この作品を読んでいなければ、一生自分が知りえなかったし意識しなかったであろう障害者スポーツのひとるである「車椅子バスケ」を正に「リアル」に描いています。慣れない車椅子でスピードを出して走る大変さ、重心を取る難しさ等が絵力によってわかりやすくストレートに伝わって来ます。登場人物達が本格的にバスケを始めるのはこれからという所なので、これからの試合が楽しみです!

車いすバスケをテーマにした3人の男たちが現実という壁に立ち向かう姿に心打たれます。予期せぬ病気や事故をきっかけに車椅子生活になった若者の「リアル」が紙面から溢れています。 スラムダンクの作者、井上雅彦さんが車いすバスケというスポーツを最大限に活用しながら、人間くさい男たちの心情や葛藤を丁寧に表現しています。車いすバスケが「コートの上の格闘技」とも呼ばれる裏側には、思春期に突如動けなくなった若者たちの心の叫びや辛い経験を乗り越えた強さが垣間見えていると感じるくらい、彼らが心のよりどころとしてスポーツに懸けている覚悟が感じられる作品です。 そふえ

病気による障害、事故による障害、そして障害を負わせてしまったことによる重い責任。主人公三人が向き合う、三者三様のリアル。戸川ひとりがスーパーヒーローなのではない。高橋ひとりが絶望に向き合っているのではない。野宮ひとりが罪の意識を抱えているのではない。『SLAM DUNK』の井上雄彦が、車椅子バスケットボールと出会う若者たちを通して描いているのは、この世界の誰もが、自分のリアルと向き合う主人公なのだという思想だ。 宮本 大人

「障害=正常な進行や活動の妨げとなるもの」。主人公の野宮朋美は、もう一人の主人公である戸川清春と出会ったときに、彼の車いすをこう呼んだ。「戸川清春はマシン脚!!これはこいつの才能だ」。戸川は車いすを「障害の補助具」と認識していたのに対し、野宮は「拡張する身体の一部」「才能」と位置づけた。人の体は時々刻々と変化し、時に大きな変化は社会との間に隔絶を生む。その隔絶を障害と位置づけるのか、新たに備わった才能と位置づけるのかで生き方は180°変わる。障害者スポーツなんて枠はない。拡張した身体が繰り広げる新たなパフォーマンスがそこにあるだけだ。リアルという漫画は、それを心に素直に伝えてくれる。 高瀬 堅吉

ひたすらかっこいい。ぶつかりあう肉体、見るからに危険そうな車椅子同士の衝突、そこに練り込まれたテクニックとパワー。車椅子バスケットボールの荒々しさがページを埋め尽くしている。もちろん、3人の主人公の成長や、脇をしめる登場人物たちのエピソードも楽しいが、僕はとにかく試合が好き。人馬一体となった選手たちの姿は戦国時代の合戦を見ているような思いになる。 柿崎 俊道

主催
助成