桃栗みかん先生は『いちご100%』を連載されていた河下水希先生の別名義です。昔野球を辞めた原因となった従兄弟に固執してしまう、そのこじれた感情が、野球という眩しいグラウンドとの対比でとても印象深く、繊細に描き出されます。野球というと熱血、爽やか、というイメージがありますが、なんとも言えない苦味も青春には含まれるのではないでしょうか。まさに群青色。一度読み始めたら、一気に最後まで読んでしまうと思います！

「私たち入れ替わってる！？」男女が入れ替わっちゃう系のラブコメ作品はたくさんありますが、ボクシングの世界王者とチャレンジャーの、正直やや男くさい…二人が入れ替わっちゃうマンガは本当に異質！単行本もそれぞれを視点にした構成になっていて、一巻が二つあると言う特殊仕様。かなりチャレンジしてますね…！クライマックスまで無駄なくまとめあげられている隠れた名作です！

「脱税の罪で実刑判決を受けたK-1の創始者・石井館長。刑期を終え出所した直後、トラックにはねられ即死。その魂は女子高生・ケイに乗り移ってしまう！」というあらすじを聞くだけで読みたくなってしまうのではないでしょうか…！流行りの転生ものの枠組み…かと思いきや、空手を愛す心も持ちながらエンターテイメントを選んだ葛藤、など人間としての深みがしっかり描かれます。空手道とは何か、拳を通して熱く響く、王道の一本です！

勢い！とにかく勢い！！そして名言の数々！！何か普通のことを大袈裟に言うっ！！！「駄作を作る勇気！」など漫画家たちの精神的支柱である島本和彦先生のマンガは勇気と元気を与えると言う意味で、真にスポーツに近いのではないかと感じます。あえてのやや古い画風に目が騙されてしまいがちですが、一本一本のペン線の美麗さにも着目してほしいです。集中線もフラッシュも全ての線に命の炎が込められている…！！

漫画家からするとスポーツ漫画の中でも、特に陸上競技は描くのが難しく感じます。それは1/100秒を縮めようとする主人公を「なぜそこまでするのか？」と読者に納得させにくいからです。『ひゃくえむ。』は、ライバルは現実逃避のために、主人公は人生を有利に進める手段として走ります。その動機の持たせ方のうまさ。そして熱さ！ まさにその動機が、二人が出会うことで力強く変化していく様をぜひ読んでほしいです！