東京オリンピック開催を巡って様々な論議が起こる中、アスリートにとって、関係者にとって、国家にとって、そして「国民」ひとりひとりにとってオリンピックとは何か、人間(アスリート)の尊厳とは何かを今一度問い直す機会、題材となる作品である。単なる「悲劇」というコトバで終わらせるのではなく、何かを感じ取ってほしい。
レビューの一覧
©山田 芳裕/小学館
陸上
デカスロン
- 小学館
十種競技の勝者がキングオブアスリートと言われる所以は
2日間で10種類の陸上競技をこなす過酷な十種競技を描く作品。コミカルな展開を所々挟みながら、山田芳裕先生の泥臭くくせのあるタッチでの物語展開は、競技の中で疲労と限界にさらされる選手たちや筋肉の悲鳴が目の前に迫ってくるような感覚を覚える。「鉄人」たちの極限の戦いを是非読んでほしい。
©️坂田信弘・かざま鋭二/小学館
主人公の沖田圭介をはじめとして、本作に登場する人物は様々な形でゴルフに真摯に向き合っている。中には志半ばで逝く人、壁や不運にぶつかり道をあきらめる人もいる。だが、その姿はすがすがしく、どこまでもまっすぐである。奇をてらうこともなく、ド派手な展開や演出もないが、コースを一歩一歩歩くように、ゴルフの深さを教えてくれる作品である。
スポーツ漫画のモチーフとして、父親を超えることはこれまで多くの作品で語られてきた。本作は前半はある意味で「父を超える」(というかオトシマエをつける)ことがテーマとなっているが、終盤のマスターズでは逆に父が息子に追いつき、並ぶことがテーマとして浮上する。本作は自分のことを「かっこ悪い」「ふがいない」と思っている父親に是非読んでほしい。
本作はピンチサーバーというひとつの突出した能力を持つスペシャリスト的な主人公、そしてそれぞれ異なるとがったスキルを持つチームメイトの成長物語である。単なる「チームワーク」のみならず、各人がより幅を持ったスキルを身につけ、それが組み合わせられることで強くなる過程が描かれており、組織スポーツとしてのバレーの面白さを感じさせてくれる。
競技を真摯に愛し、極限まで努力してトップアスリート(関取)にのぼっていく中、自分が競技に愛され、選ばれていないことを自覚したら・・・。「相撲に選ばれていない」男鮫島鯉太郎のこの取組が最後になっても良いと言う覚悟を持っての精一杯のあがきと、取組相手への厳しく全力での対決、そして取組後には相手を救い活かす姿は、読んでいてアツくなる。