選者の一覧

池川 佳宏

マンガ研究者

レビューの一覧

©すがやみつる/小学館
eスポーツ

ゲームセンターあらし

すがや みつる
小学館
eスポーツを先どった! アーケードゲームブームを支えたバトルマンガ
ゲーム攻略マンガの嚆矢である本作は、同時にeスポーツマンガの先駆けでもある。「プログラムを攻略」するという本来は静的な内容に対して、あらしの「月面宙返り」「炎のコマ」などの派手なアクションによるスポーツ的な身体表現と、プレイするゲーム内世界をシンクロ描写するというトリッキーさが目を引く快作。現実を後追いする形になることも多いスポーツマンガにおいて、むしろマンガの世界に現実が追い付いた事例でもある。
その他

釣りキチ三平

矢口 高雄
講談社
週刊少年マガジン
普段は自然を相手にした釣りにアタックしている三平が、キャスティングの飛距離を競う大会に出場するという異色のシリーズ「シロギスの涙」編に注目。ライバルの「シャークのジン」との小競り合いや、頼れる兄貴の魚紳さんから距離を置かれての克服プロセスなど、スポーツマンガを意識した構成になっている点がユニークだ。最終盤で三平は飛距離逆転のため「釣り」の原点に戻った秘策を編み出す展開が熱く、また異色のシリーズであることが強調された内容となっている。
野球

県立海空高校野球部員 山下たろーくん

こせきこうじ
コアミックス
「史上最高の野球部員」になることを目指す主人公、山下たろーがバカにされながらも圧倒的努力と根性でチームを牽引し、甲子園優勝へと導くストーリー。泥臭い描写が多数ありながらも4等身程度のマンガらしいキャラクターが活躍し、古典的王道少年野球マンガの系譜と、非リアルで荒唐無稽な野球マンガの系譜が融合した作品といえる。野球と関係のないスピンオフ作品『株式会社大山田出版仮編集部員 山下たろーくん』『山下たろーくん うみとそらの物語』でも熱血たろー節は健在。
©ちばあきお/集英社
野球

キャプテン

ちば あきお
集英社
中学校野球部が主役! 3年間の青春=部活の魅力
特異なキャラクターや魔球などは登場しない、チームワークやリアルな野球戦術にじっくりと焦点を当てた野球マンガの古典的名作。主人公が固定されず、代替わりしていく墨谷二中の「キャプテン」というポジションを軸に、役割が人物を育て、責任を背負って少年が奮闘する姿に読み手が感情移入していくという構成に引き込まれる。こうして作中で育ったキャラクターの魅力が大きく、初代キャプテン谷口の卒業後が描かれたスピンオフ作品『プレイボール』も並行して楽しめる。
野球

背番号0

寺田 ヒロオ
小学館
専門雑誌『野球少年』(芳文社)の中心的な作品として掲載された、主人公ゼロくんの日常と所属するZチームの仲間との友情を描いた野球マンガ。試合そのものだけでなく、学校や地域などの環境を含めた少年たちの溌溂とした野球ライフを描く。野球が本筋でないエピソードも多数あり、「少年マンガの理想」を目指した寺田ヒロオの作風が存分に発揮された作品である。日本初の野球マンガとされる井上一雄『バット君』の流れを汲む作品としても押さえておきたい。
主催
助成