選者の一覧

米光 一成

ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授

レビューの一覧

©ちばあきお/集英社
野球

キャプテン

ちば あきお
集英社
中学校野球部が主役! 3年間の青春=部活の魅力
アニメ化、映像化もされた野球マンガの大傑作。名門校野球部から転校してきた谷口タカオ。実は二軍の補欠だったのだが言い出す機会を失って、勘違いのはてにキャプテンにされてしまう。その谷口タカオが、試行錯誤と努力で野球部を引っ張っていく。谷口キャプテンが卒業してもマンガは終わらず、丸井、イガラシ、近藤と歴代キャプテンがスピリッツを受け継いでいく。そのスタイルは、『ジョジョの奇妙な冒険』やAKB48に影響を与えた(←ただの思い付きで書いた)。現在、コージィ城倉がキャプテン・スピリッツを引継ぎ『キャプテン2』を連載中。
eスポーツ

東京トイボクシーズ

うめ
新潮社
10年後に一番稼げる職業はプロゲーマー? 今、そしてこれからのeスポーツを描く
日本初の全日制「eスポーツ科」を設立した白郷学園に特待生としてスカウトされた安曇野蓮が主人公。「コンピューターゲームがスポーツになりえるのか?」というレベルで終わらず、「ゲームはスポーツという言葉を纏うことで何を手に入れ何を失うのだろう」(冒頭で掲げられる言葉!)という問いまで射程に入れた作品。自分の身体を使ったスポーツマンガと、デジタルのキャラクターに身体性を仮託した本作を読み比べるのも興味深い。
©山岸凉子/KADOKAWA
バレエ

舞姫 テレプシコーラ

KADOKAWA
過酷な現実と天才への期待。美麗に描かれたバレエの世界
『日出処の天子』『アラベスク』の山岸涼子によるバレエマンガ。バレエを習う小学校5年生の篠原六花(第二部では高校一年生になる)と、彼女をめぐる人々が描かれる。いじめ、ケガ、身体、振付、重圧、ありとあらゆる要素がバレエを軸にして渾然一体に描かれる。過酷な場面もあり、いまでも思い出そうとしても自分の中でその場面を思い出すことを止めてしまうほどで、衝撃を受けた記憶だけが蘇る。第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。
野球

ONE OUTS

甲斐谷 忍
集英社
ヤングジャンプコミックス
賭野球「ワンナウト」で無敗のピッチャー渡久地東亜が、優勝経験のない「リカオンズ」に入団して、相手チームどころか、野球界の権力者を手玉に取る痛快作。完全出来高制のワンナウツ契約と野球のルールを縦横無尽にコントロールし、罠を仕掛け、人の心を操り、丁々発止の心理戦に見せかけながら最後に大逆転を決めて、すべて渡久地の手のひらの上で踊っていたことが判明する。桃太郎電鉄なみにワンナウトで何億円もの金が動く賭博的ダイナミックさも爽快。スポーツにおけるルールの重要さを実感するためにも必読です。
野球

遥かなる甲子園

原作:戸部 良也、マンガ:山本 おさむ
双葉社
聴覚障害の少年たちが困難を乗り越え、野球に青春をぶつける
福里ろう学校で硬式野球部を作り甲子園を目指す聴覚障害を持つ少年たちが主人公。野球憲章と事なかれ主義に阻まれ、高等学校野球連盟に加入することさえ許されない理不尽と闘う姿が熱くていねいに描かれる。登場人物に感情移入させるパワーが凄くて、選手たちと一緒に闘い怒り泣き、聞こえないはずの甲子園の歓声が聞こえてくる。六年かけて取材し書かれたノンフィクション『遥かなる甲子園』(戸部良也/双葉社)をもとにフィクションとして再構築した傑作。初めて読んだときは泣き疲れるぐらいに泣いてしまった。今回、再読して、やはり涙が止まらなかった。
陸上

ひゃくえむ。

魚豊
講談社
人が走ることの根源に触れる、100メートル走という刹那の機微を描く
スポーツが記録への挑戦だと考えるならば、最も純粋でストレートな競技は100メートル走ではないか。何しろ「速く走る」だけだ。全力疾走! チームも、複雑なルールも、最終的には対戦相手すらも消えてしまうストイックな競技を、熱を持って描いた傑作が2つあって、それが『ひゃくえむ。』と小山ゆうの『スプリンター』だ。どちらも読んでほしい。
主催
助成