有名な江川卓の「空白の一日」の前日譚と後日談を中心に、当時の巨人軍三羽烏と言われた、江川、西本、定岡の3人の投手を事実の他に心情を細かくとらえて追った作品。当然、空白の一日の当事者小林繁の当時の行動についても詳細にわたって描かれている。いかに江川がすごい選手であったかということを、綿密な当時の取材に基づき、主に周囲の選手の江川の印象から描いており、この手法を西本にも当てはめている。両者の凄さが本人の自覚を他所に、同じく一流であるはずの周りの選手から見ても並外れている様子が、成績の数字だけではなく選手や関係者の心情で描かれているところが、当時を知る私にとってはそこはかとなく面白かった。

名作『柔道部物語』を同作に同じく小林まことが描く女子版の物語。北海道生まれで美容院を営む母に育てられた神楽えもは、むらっけの強い負けず嫌い。通っていた高校の柔道部でたまたま空いていた階級の選手として練習に参加するが、初めて参加した公式戦から持ち前の負けず嫌いで勝利を手にし、そこから世界を目指すところまで成長する。とにかく、むらっけと負けず嫌いが気持ち良くて、読んでいると自分も頑張ろうという気になるのが、前作『柔道部物語』にも増して気持ち良い。自分をアゲたい時に読みたい作品

サッカーをそのプレイ内容ではなく、サッカーチームの運営、中でも特に金策や選手の年俸などにフォーカスした珍しい作品。企業のスポンサードによる野球に対し、地域に根付いて活動していくサッカークラブ経営が良く分かる。「愛媛イーカッスル」という微妙なチームにいる、これまた微妙な立ち位置の選手カジが、自分の給料とプレイの関係を多くの人から叩き込まれ、思わぬ自分の長所を発見し、活躍していくお話。とはいえ、クラブ経営もカジの活躍も簡単には上手くいかないところに、お金の話が絡んで進んでいくところがとても面白いところ。

父母ともに東北はおろか全国に名を響かせる剣道選手の息子、六三四は小さなころから剣道がめっぽう強い。幼いころよりライバルの東堂修羅と切磋琢磨し、立派な剣士と成長していきます。負けず嫌いの六三四が、どうにか対策を考えて稽古を重ね、なんとか勝ちを取っていく姿には、マンガ連載当時の少年たちに大きな影響を与え、これを見て剣道を始める子供たちが続出しました。かくいう私もその一人です。

ホームレスのケンちゃんの40歳の誕生日に、神様がひとつだけ願いをかなえてくれるとやってきました。阪神が大好きだけど心臓が悪くて野球の出来ないタケ坊のために願ったのが「世界で一番野球の上手い40歳になること」阪神に入団したケンちゃんは、ピッチャーとしては160kmを超える豪速球、打てばホームランを連発し、タケ坊のために阪神タイガースの日本一に向かって力を尽くします。登場人物のほとんどが、タケ坊のためにケンちゃんの活躍を支え、一人の男の子が生きていく力を見守る感動の全3巻です。泣きたいと思った時に読めば確実に泣けてしまえる素晴らしい作品です。