このマンガのレビュー
スポーツマンガというカテゴリーにはとてもおさまらない不朽の名作。もちろんテニスを描いた作品なのだが、通常スポーツマンガにほぼ必ず存在する主人公の明確なライバル的な存在の選手が出てこないことがまず画期的。試合のシーンよりも日常の練習風景、コーチや先輩後輩らとの人間関係、さまざまな出来事を通じての主人公岡ひろみの挫折と成長こそが本作の魅力。さらに、前半の宗方仁、後半の桂大悟の二人のコーチが放つ名言の数々は、とても20代半ば過ぎの言葉には思えず、マンガを超えた哲学書と言っても過言ではない。本作を書き上げたのちに作者が宗教家になったのも納得。 筆谷 信昭
10代で読み、どれほど人生に影響を受けたか知れない。一つの物事に命を懸けて真摯に打ち込むことが、人としての成長に結びつくことを描いた、まさにスポーツ漫画のバイブルと言えるだろう。そして「ここまでだと思ったとき、もう1歩ねばれ」「男なら女の成長をさまたげるような愛し方はするな」といった名言の宝庫でもあり、人生訓としても読んで欲しい永遠の名作だ。 中村 公彦
我が家ではお蝶夫人の「蝶のように舞い、針のように刺す‼」は名言として語り継がれています。男女問わずまつげバシバシで全員10頭身。主人公のひろみが宗方コーチの激しすぎる練習から逃げ出したり、山の中で目隠しで修業したり、恋愛のあれこれがあったりとどの巻を読んでも驚きの連続で、飽きることがありません。特に印象深いのは、ひろみとひろみの憧れ・お蝶夫人の関係性。天才と呼ばれたお蝶夫人の実力さえも越えたひろみを、お蝶さまは悔しさを抱えつつも先輩としてきっちり認め、その後もひろみが悩んでいる時には必ず助けてくれるといういい女っぷり。このマンガは天才を裏側から育てたお蝶さまの成長物語でもあると思います。 風間 美希
1970年代に『週刊マーガレット』に連載されていた、言わずとしれた伝説的テニスマンガ。高校生の岡ひろみが宗方仁コーチと出会い、テニスを通して選手として、人間として、女性として成長していく物語です。テニスのド素人だった少女が運命的な指導者と巡り合うことでどんどん上達する痛快さ、そして唐突に訪れる大切な人との別れ。熱血スポ根マンガのイメージが強いこの作品ですが、実は人生にとって大切な言葉に溢れる作品でもあります。心に刻みたい名言の連続です。 ウエハラアズサ