有名な江川卓の「空白の一日」の前日譚と後日談を中心に、当時の巨人軍三羽烏と言われた、江川、西本、定岡の3人の投手を事実の他に心情を細かくとらえて追った作品。当然、空白の一日の当事者小林繁の当時の行動についても詳細にわたって描かれている。いかに江川がすごい選手であったかということを、綿密な当時の取材に基づき、主に周囲の選手の江川の印象から描いており、この手法を西本にも当てはめている。両者の凄さが本人の自覚を他所に、同じく一流であるはずの周りの選手から見ても並外れている様子が、成績の数字だけではなく選手や関係者の心情で描かれているところが、当時を知る私にとってはそこはかとなく面白かった。 菊池 健