各地で様々な人と出会い、成長を重ねるストーリーを読み進めると、自分も旅した気分となる。各地の情報の見聞が広がるということに限らず、人と人との絆や温かさにも触れ、学習要素・教育的要素も詰まっている。私も貯金をして輪行自転車を購入したくらい、読者に日本一周をしたくなるような気持ちを抱かせ、コロナ禍で、ますます思いを馳せさせるような作品である。
レビューの一覧
©藤子不二雄A/小学館
すべてに極端なまでのフィクション感を持たせることで、いわゆる我々の考えるリアルなゴルフストーリーの漫画を最初に拒絶するところが潔い。その一方でゴルフの知識も語られ、それをもとにして、実際にはあり得ないコースでの対決やスーパーショットでの勝負など、ストーリー展開を面白く見せていくところが素晴らしい。
主人公の芯の強さや人望の厚さ、ストーリーの展開の早さや場面描写の巧みさなど、スッキリと、どんどん読み進められる。スポーツ根性ものならではの様々な試練、コーチの厳しさ、心理戦、そして感動溢れる場面もあり、男女問わず様々な角度から楽しめる作品である。
サッカー
赤き血のイレブン
- 少年画報社
サッカーマンガの原点であり、サッカーというチームスポーツを通じて主人公が成長していく安定感のあるストーリー展開は読者も追いつきやすい。熱血感が強く、多少は現実離れしたプレーもあるが、スポーツ根性ものならではのリアリティ以上の楽しみ方ができ、最近のスポーツマンガとは一味違った視点で楽しめる。
空手
空手バカ一代
- 講談社
伝説の空手家・大山倍達の半生を描いた伝記的な作品
空手そのものだけではなく実在した人物の人生を描いた作品であるところが面白い。
清廉さ、真摯さ、情熱を重んじる人物像を主人公にしたところに少年マンガのお手本を見る。ハードボイルドやノンフィクションを感じさせる他のマンガにない迫力が作品の魅力をいっそう引き立てる。事実を完全に再現することの難しさに挑戦した梶原一騎氏の力作であり、空手ブームを巻き起こした傑作といえる。
夢に向かって自分の肉体を破壊していく主人公の姿は極端ではあるが、マンガ表現だからこそ許されるスポーツ根性ものをベースにしたフィクションであるとするならば、試練に対して命懸けで努力を重ねる姿に多くの読者を惹きつけたともいえる。さらに主人公の熱量の高いキャラクターを通じて、愛情に満ちた厳しい父、宿命のライバルの花形、親友の伴などが輝かしく描かれており、そのストーリー展開が益々読者の心をつかむ。野球マンガを通じて戦後の影響が残る貧しい日本社会を舞台に、夢や希望を持って強くたくましく生きようとする日本人の姿を描いた功績は何よりも大きい。
スポーツものでありながらアウトサイダーからの転身を描く作品展開は、人物像に焦点をあてることにより、これまでのスポーツ根性ものを超えたストーリーに仕立てていったところが秀逸である。 とりわけ主人公の心の温かさや野性味溢れる逞しさを描いた点が素晴らしい。そのうえ実在した人物を想起させるリアル感もある。そこに他の登場人物の濃いキャラクター設定が読者のさらなる妄想を膨らませる。試合の緊迫感が伝わる高い表現力の一方でしっかりと命の重さも伝えており、敗北の美学に説得力を持たせている。