ボクシング漫画には『あしたのジョー』があった。正直、あの名作に肩を並べるボクシング漫画なんて登場しないと思っていた。そんなハードルを軽々超えていったのが『はじめの一歩』だった。日本ボクシング界のリアルな風景。描かれる聖地・後楽園ホールは、まるで、実際に試合が行われたかのような錯覚を感じた。主人公・幕之内一歩以外の登場人物たちの試合も合わせると、描かれた150以上の試合は、事細かな描写で見ごたえたっぷり。試合中は息をするのも忘れて見入る。いつまでも見たい死闘に、どっちが勝つのかやきもきする。試合が終わったときの疲労感。いつも完全にその世界に引き込まれている。特にキャラクターの個性の描き方が上手で、没入感がすごい。連載から30年、いつまでも、『はじめの一歩』の世界に浸っていたいと思う。眞形 隆之