選者の一覧

眞形 隆之

人狼伝道師

レビューの一覧

©高橋陽一/集英社
サッカー

キャプテン翼

高橋 陽一
集英社
今もなお続く、世界中から愛される名作!
子供たちの人気という面でいうと、それまで野球と比べると、大きな差をつけられた二番手という存在だったサッカー。そのサッカー人口を爆発的に増やしたのは間違いなく『キャプテン翼』であった。サッカー人口が爆発的に増えたおかげで、日本は着実に強くなり、ワールドカップ出場常連国まで成長していった。『キャプテン翼』が与えた影響は国内だけに留まらず、世界にも伸びていった。世界的名選手のフランスのジダン、アルゼンチンのメッシ、イタリアのブッフォンといった多くのスーパースターが好きな漫画として「キャプテン翼」の名前を挙げている。世界的に影響を与えたと考えたとき、『キャプテン翼』以上のスポーツ漫画はないのではなかろうか?
格闘

となりの格闘王

原作:緒田 太一、漫画:西条 真二
秋田書店
週刊少年チャンピオン
キックボクシング、空手、カンフーなどの頭文字「K」にちなみ、立ち技格闘技の最強を決めようと異種格闘技戦が行われ、一大ブームとなった「K-1」。その格闘技界の様子を忠実に描いたドキュメンタリー漫画。リアルな試合が漫画上で後追いで展開されるため、試合結果を知っている者は結末がわかった状態で見ることになる。だが、作者の取材の努力で、じつはあのときのあの技はどうだったのかと解説が読める楽しみあった。周りの友人に漫画を読ませ、多くの人を「K-1」の沼に引きずり込むための最適ツールだった。このようなドキュメンタリー漫画は、スポーツを盛り上げるために効果があることは明らかで、プロ野球やJリーグをはじめとする、すべてのスポーツ競技のプロモーションの一環として活用してもらいたい思う。
ゴルフ

あした天気になあれ

ちば てつや
講談社
週刊少年マガジン
『あした天気になあれ』というタイトル名や、「向太陽」という主人公の名前は知らなくても、ゴルフをやっている人の多くが、当時「チャー・シュー・メン!」と言いながらゴルフクラブを振っていた。これは主人公の向太陽が、ゴルフスイングをするときに、ゆっくりとリズムよくスイングするために発する言葉で、「チャー」でクラブをゆっくりあげて、「シュー」でクラブをトップに持っていき、「メーン!」と言いながら打つというもの。リズムが速くならないという効果が得られた。ゴルフをたしなむおじさんたちが、こぞって初心者に教えるときに、この「チャーシューメン」という打ち方を教えていた。練習場にいくと、あちこちで、この「チャーシューメン」という言葉を聞いた。これはもう社会現象だった。ここまでスポーツをレクチャーする言葉が浸透したことはないという意味で、これはもう金字塔の漫画であることは間違いない。
ボクシング

はじめの一歩

森川 ジョージ
講談社
いじめられっ子からプロボクサーへ。努力を重ねて一歩ずつ前に進む!
ボクシング漫画には『あしたのジョー』があった。正直、あの名作に肩を並べるボクシング漫画なんて登場しないと思っていた。そんなハードルを軽々超えていったのが『はじめの一歩』だった。日本ボクシング界のリアルな風景。描かれる聖地・後楽園ホールは、まるで、実際に試合が行われたかのような錯覚を感じた。主人公・幕之内一歩以外の登場人物たちの試合も合わせると、描かれた150以上の試合は、事細かな描写で見ごたえたっぷり。試合中は息をするのも忘れて見入る。いつまでも見たい死闘に、どっちが勝つのかやきもきする。試合が終わったときの疲労感。いつも完全にその世界に引き込まれている。特にキャラクターの個性の描き方が上手で、没入感がすごい。連載から30年、いつまでも、『はじめの一歩』の世界に浸っていたいと思う。
野球

大甲子園

水島 新司
秋田書店
週刊少年チャンピオン
「ドカベン」こと山田太郎の所属する明訓高校を中心に物語は進むが、「球道くん」や「一球さん」などの水島新司オールスターが集結して、夢の対決を披露する。有名映画だと『アベンジャーズ』や、漫画でも『ドラゴンボール』にアラレちゃんが登場したり、話題となったクロスオーバー作品はたくさんあるが、『大甲子園』が描いたのは原作の枠の超えた戦い。主人公vs.主人公の戦いに勝敗をつけるのは禁断だと思えたが、汗握る戦いに、これ以上ない興奮を味わったのも事実である。少なくとも『大甲子園』以上に興奮させられたクロスオーバー作品を私は未だ出会ってないし、これから出会うことはないのだろうと思う。
野球

ドカベン

水島 新司
秋田書店
週刊少年チャンピオン
「ドカベン」は、ご飯の大盛りの弁当という意味で、土方が常用した金属製の大きな蓋付きの弁当箱が由来。野球のルールを「ルールブック」ではなく『ドカベン』に教えてもらった。そんな野球小僧がごまんといた。もしも、野球の審判と水島新司、どちらが野球のルールに詳しいか?と問われたら、私は迷わず水島新司の方に手を挙げる。魅力的な登場人物、ルールの虚を突く作戦。野球に対する作者の知識量には敬意を表する。ちなみに『ドカベン』は野球漫画の代表格といえるが、初期は柔道漫画だったことは、じつはあまり知られていない。
ボクシング

あしたのジョー

原作:高森朝雄 漫画:ちばてつや
講談社
ボクシングマンガの金字塔! ジョーも力石徹も社会現象に
主人公・矢吹丈の半生を描いた、言わずと知れたボクシング漫画の金字塔。ライバル・力石徹の死は、当時、社会現象になり、リアルな葬式まで行われたとニュース記事で読んだ。登場人物の死が、ニュースになり新聞になり、ここまで社会現象や事件になったのは『あしたのジョー』の力石徹くらいではなかろうか? 衝撃度的には『タッチ』の和也も挙げられるが、時代背景を考えると力石徹は別格だったんだろうと想像できる。50年前に描かれた作品だが、今でもまったく色あせていない。感覚としては、漫画作品というよりも、文学作品に近い孤高の存在(こう書くと漫画と小説どっちが上か?みたいな話のようにも聞こえるが、決してそういうことではない)。スポーツ漫画を語る上で『あしたのジョー』を選ばない理由が思いつかない。
主催
助成