ユースからプロになるサッカーの時代、高校生のサッカー人生を描く
『アオアシ』は、東京のユースチームを舞台に、プロになるべく切磋琢磨する少年たちを描汲作品。本作に置いて重視されているものの1つが「考える」こと。かつては「スポーツ根性モノ」というくくりもあったスポーツ漫画。個人的に「根性」という括りは苦手なのですが、本作はその「根性」を分解し、逆境を打破しようとする知性と、ピンチでも考え続けるメンタルのタフさとして描いているように感じます。考え続ける少年たちが発する言葉たちと、試合中、その言葉すら発せないような緊張感が高まりきった刹那の瞬間と、そこから解放されるカタルシスは必見です。
バレーボール
少女ファイト
- 日本橋 ヨヲコ
- 講談社
作者の日本橋ヨヲコさん曰く、バレーボールでは空気を読むことが重要だそう。各々の抱える事情を相互の「コミュニケーション」によって解きほぐしていく主人公たちは、「空気を読まず」場を引っ搔き回していくため、自ら悪役を名乗っていきます。繊細な心理描写から生まれるドラマと、ハッキリした線で描かれる、静動のメリハリがある描写。そこに日本橋ヨヲコさんの趣味が反映されたサブカル風味が端々に効いて、1粒で3度美味しい漫画になっています。
おそらく、世界で一番スポーツファン意外の人も楽しんでいる作品が、『テニスの王子様』ではないでしょうか?本作は漫画から始まり、アニメやミュージカルなど、幅広い層に親しまれており、現在のオタクカルチャーを代表する作品の1つです。本作において「最強」とされる技が象徴するように、形はどんなものでも、一番重要なのは「テニスを楽しむ気持ち」です。作品そのものがそれを実践しているのは、本当に素晴らしいことだと思います。
「才能」と向き合って自分を知って道を拓く青春群像劇
スポーツというものに触れる中で、絶対に突き当たる「才能」と「挫折」。『ピンポン』では、才能を持ち、負けられないというプレッシャーに押しつぶされそうになる孤独な強者や、人一倍努力はするが才能は無い者など、それぞれの立場を持った5人の高校生が描かれます。才能のないものは舞台に立つことすらできない、ストイックでそぎ落とされた世界だからこそ、少年たちの文字通り血反吐を吐くような努力が、逃げることのできないくらい真正面からどストレートに突き刺さります。そして、その突き詰めに突き詰めきった世界の頂上で、2人の少年は何故笑顔だったのか? 間違いない傑作を是非読んでほしいです。
ボクシング
ボーイズ・オン・ザ・ラン
- 花沢 健吾
- 小学館
- ビッグコミックス
この漫画では、競技としてのスポーツはそこまで描かれない。しかし、この日本で人が生きるうえで切り離しがたいスポーツの姿が描かれています。スポーツは人に何かを与えてくれるだけではなく、どうしようもなく奪い去ることもある。そうだとしても、みっともなくても、リングに上がったものにはそこで目にする景色がある。大会に出るわけでも、ライバルと鎬を削るわけでもないスポーツというのも非常に面白いと思います。