スカイスポーツのなかでもグライダーに注目した「空」のマンガです。大学の航空部を舞台に、主人公が空を知り、空と対話するなかで成長していく話は、上昇気流と主人公の成長曲線とが混じり合いながら、真っ青な世界に吸い込まれていく、清々しいシーンと綺麗な空と雲の絵が目を奪います。対戦相手のある競技でありながら、視線を遮るもののない空の世界で選手が自分自身と対話するシーンは、競争社会における「自分」とは何かを考える視点の大切さを教えてくれます。
レビューの一覧
©小林有吾/小学館
田舎で「サッカーがうまい」少年が、プロサッカークラブの参加にある「ユース」に参加するところから始まる稀有なサッカーマンガです。通常の高校サッカーマンガは仲間とともに対戦相手を打ち破り、全国大会優勝を目指すものが大半です。高校生にとって全国高校選手権大会に出場することが目標であり夢だからです。一方、同じ高校生ながらクラブチームに所属する子どもたちはプロ選手を目指しています。目標はプロになることであり、相手に勝つことも大会で優勝することも手段でしかありません。そんな知られざる厳しい環境のなかで切磋琢磨しながら成長する主人公とその仲間たちの姿、そしてプロ選手になるために上がらなければならない選手、人間には何が必要なのかをリアルに伝えてくれるのが『アオアシ』です。
生真面目で、得意は勉強。そんな主人公がテニスに目覚めた時、センスの塊、卓越した身体能力、テニスエリートに対して「どうしたら勝てるのか」を突き詰めて考える、「思考のテニス」は必見です。自分の能力を整理して、自分と対戦相手の距離を図り、勝つ確率を分析します。試合当日までに残された時間と、確率を1%でも上昇させるためにできることを愚直にこなす姿は、凡人の生存戦略はいかに立てられるべきかについて、テニスを通じて学ぶことができる一冊です。
高校野球の監督となった物理教師が、普通の野球少年たちが名だたる高校を打ち破り甲子園を目指すためには何が必要なのか。そこには気合も根性もなく、究極まで効率性を高めた「野球がうまくなる」ためのエッセンスが詰まっている一冊です。人間の身体や成長速度、その特徴は一人ひとり違います。同じ練習をするのではなく、一人ひとりの良いところを伸ばし、苦手なところを克服する。選手の「なぜ」には根拠を持って、データとともに回答していく監督像は、恐怖や権威で支配するスポ根性ものと一線を画します。
気合や根性、友情の力で強敵を打ち倒すスポーツマンガの定石を根底から覆す、サッカーをする人も、しない人にも読んでほしい「サッカーを科学する」マンガです。フットボールネーションには、「なぜ××なのか」という問いがふんだんに出されては、その問に対する納得度の高い解答が導き出されます。サッカーがうまいとはどういうことなのか。そもそもサッカーは身体のどこでするスポーツなのか。最先端の科学的見地を取り入れた、読むと翌日からプレーが変わるほどの衝撃を私たちにもたらしてくれる。サッカー好きでなくても「なるほど!」と手を打つ一冊です。