サッカーマンガといえば、能力に恵まれている男の子が天才プレーヤーとして活躍するのが王道だと思いますが、『DAYS』はサッカーをやったことがないし、人と競争するのは嫌いな高校生主人公つくしが全国を目指していくもの。フィールドが広く走る体力が重要なスポーツという点に着目した作品で、主人公は「走って、周りの技術が高いプレーヤーをサポートする」ことに特化して能力を身に着けていきます。ど素人と周りから疎まれていたつくしが、徐々に全国を狙うための重要プレイヤーと認識されていく様子は読んでいて気持ちがよかったです。21年1月に最終回を迎え、間延びせずにきっちり終わりました(番外編、安田先生に描いてもらいたい…)。
レビューの一覧
©️ Naoko Takeuchi
フィギュアスケート
The チェリー・プロジェクト
- 講談社
『セーラームーン』武内直子が描く、繊細なフィギュアスケートの世界
『セーラームーン』の著者&冨樫義博氏の結婚相手としても知られる武内直子さんの初期作。主人公のちえり(チェリー)は父が元スケートチャンピオンで、振り付けを見ただけで完コピできる天才。憧れのスケーター続(つづき)くんは実家が資産5億ドルの大財閥で、彼とペアで踊ることを目標にして、もう一人の天才少女・キャンティ秋山と争うという物語。最終回に向かうにつれ主人公の能力が開花し、一人で踊っているのにデススパイラルという男子に腕を持たれないとできない技を繰り出します。笑っていいのか真面目に受け取ればいいのかわからなくなりますが、絵はさすがの武内さん、非常に繊細でうっとりしてしまう全3巻の名作です。
©みかわ絵子/集英社
おバカキャラの高校生主人公が、実は中学の時は元天才キャッチャーで、あることをきっかけに記憶喪失になることで自分の野球人生への悩みを押し殺していた。というしょっぱなから衝撃のストーリー展開で一気に引き込まれます。主人公が相棒の天才ピッチャーと挫折を経験した周りの選手に助けられ、前を向くまでの前半部分のストーリーテリングが秀逸で、私は野球に全く興味もないしやってみようとも思わなかった口ですが、野球を見てみたいなと思うほどにおもしろかったです。主人公のお母さんがいつでもフラットなのと、相棒がどんなときでも主人公を信じるという、危うくもある信頼関係もいいのです。この先の展開が楽しみ。
©山本鈴美香/ホーム社漫画文庫
我が家ではお蝶夫人の「蝶のように舞い、針のように刺す‼」は名言として語り継がれています。男女問わずまつげバシバシで全員10頭身。主人公のひろみが宗方コーチの激しすぎる練習から逃げ出したり、山の中で目隠しで修業したり、恋愛のあれこれがあったりとどの巻を読んでも驚きの連続で、飽きることがありません。特に印象深いのは、ひろみとひろみの憧れ・お蝶夫人の関係性。天才と呼ばれたお蝶夫人の実力さえも越えたひろみを、お蝶さまは悔しさを抱えつつも先輩としてきっちり認め、その後もひろみが悩んでいる時には必ず助けてくれるといういい女っぷり。このマンガは天才を裏側から育てたお蝶さまの成長物語でもあると思います。
©︎井上雄彦 I.T.PLANNING,INC.
バスケットボール
SLAM DUNK
- 集英社
バスケマンガの金字塔!90年代にバスケを一躍世界ブームに
2021年時点で30〜40代の人たちにとっては認知度高の名作。31巻で終わる潔さも好きです。主人公のヤンキー桜木くんが、ヒロインに振り向いてほしくてバスケ部に入る始まり方は、普通の少年マンガで、最初の方は「ふーん。」と思っていました。でも、ケンカで負けたことのなかった主人公が暴力で解決できない世界を経験し、ゲームの世界で勝負を挑んでいくことを覚えていく様が、井上先生の素晴らしい筆致と精神描写によって読者の心に訴えかけてきます。少年ジャンプの王道を正しすぎるくらい正しく突き進んでる作品ですが、表現には嫌みっぽさももったい付けもなく、読めばその瞬間からバスケの勝負の世界に引き込んでくれます。